国芳一門浮世絵草紙〈2〉あだ惚れ (小学館文庫)
河治 和香
小学館 2007-12-04
<あだ惚れ>とは、むなしい恋のこと。ねずみ色が粋なのは、あきらめの色だから。むなしい片恋でも思いきれないのは、惚れてしまったから。
花魁の匂いは「裾風(すそかぜ)」。馬鹿の馬と不埒の埒で「馬埒(ばらち)」。北斎との邂逅を描いた「畸人(きじん)」。人の心も花のように褪めやすい「桜褪(さくらざめ)」。高野長英の脱獄をめぐる遠山の金さんの「侠気(おとこぎ)」。
天保の改革の嵐の中、相変わらずの即席頓智で、ひとり気を吐く江戸っ子浮世絵師国芳と娘の侠風(きゃんふう)美少女登鯉を巡る人々の織りなす浮世模様、そして様々な、むなしい片想い。
シリーズ第一作『侠風むすめ』が絶賛された、注目の第二弾!
歌川国芳一門の生活を描いた前作『侠風むすめ』の続きです。
時は天保14年(1843)。この頃は贅沢禁止の名のもとに様々な規制が行われ、落語や花火は禁止、寿司の値段や豆腐の大きさにまで決まりができるなど、かなり生活が苦しかった時代。浮世絵も色数が制限されたり、役者絵が禁止されたりと、絵師の生活にも陰りが出ています。
そんな中、国芳は規制に頓智を働かせ、役者絵の代わりに役者の顔の魚の絵を書いたり、猫にしてみたりと工夫を凝らし、江戸庶民の人気を博していきます。
相変わらず、国芳の軽快洒脱な江戸っ子気質としゃべり口が、読んでいて愉快にさせてくれます。
この巻では、あの有名な葛飾北斎やその家族が出てきます。
また、様々な登場人物が、話が進むにしたがって絡んできたりと、話の展開に深みが出ていて読み応えもありますね。大塚同庵や高野長英なんかも出てきます。
歴史などで学んだことと、歴史では学ばなかった江戸庶民の生活、その上に織りなされる軽妙な話の展開がこの小説の大きな特徴。話を楽しむ中で、国芳の有名な絵の背景を知ることもできます。また、国芳の弟子たちの人物模様も、知らず知らずにわかってきたりします。
歌川国芳の絵に興味を持った方にお薦めの小説です。
【目次・メモ】
- 裾風(すそかぜ)
- 馬埒(ばらち)
- 見出しは、国芳の女弟子である歌川芳玉の『見立松竹梅の内 たなばたの竹』。(P.56)
- 椙森神社の側の天狗の話。(P.77)
- 畸人(きじん)
- 見出しは、国芳の西洋風の浮世絵『二十四孝童子鑑 薫永』。(P.102)
- 護国寺で葛飾北斎が藁箒を用いて大達磨の絵を書いたことがある。(P.114)
- 桜褪(さくらざめ)
- 見出しは、国芳の浮世絵『竹沢藤治 両国廣小路にて一流曲独楽』。(P.152)
- 玉露はこの頃、当時18歳で日本橋山本屋の当主になった山本嘉兵衛が発明した。(P.201)
- 侠気(おとこぎ)
- 見出しは、国芳の『東都名所 佃嶋』。(P.212)
当時はあまり人気がなかったらしい。- この時小伝馬町の火事で切放(きりはなし)になった囚人たちは、回向院に戻るように指示されていた。(P.223)
- 解説 内藤正人
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