ワーキングプア―日本を蝕む病 | |
NHKスペシャル「ワーキングプア」取材班 ポプラ社 2007-06 売り上げランキング : 97 おすすめ平均 NHKの良心と底力を感じさせる好ドキュメントをまとめた 低所得者、ホームレスの言い訳集 身近な問題として。 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
読んでいると暗くなる。
でも現実として目を背けられない気がする本でした。
ワーキングプアというのは、働いても貧困から抜け出せないような状態、あるいは働きたくても働けないという状態を指すようです。
その新たな貧困問題が日本に広がりつつある、それが著者達がこの本を記す目的であり、この本の内容になっています。
・働き口がないのは、働く気がないから。
・給与が低いのは、努力が足りないから。
首都圏でコンサルタントをし、毎日遅くまで、たまに体を壊すぐらい働いている僕のような人間ですと、単純にそう考えてしまいます。
が、単純にそうではないことをこの本が教えてくれます。
本の中には、興味深いデータがいくつか提示されています。
例えば・・・
・全給与所得者の21.8%は年収200万円以下
・女性給与所得者の42.8%は年収200万円以下
なのだそうです。
特にひどいのは地方の方で、
・東京都の1人当たり県民所得:456万円
・東北6県の1人当たり県民所得:241万円
というデータも示されています。
このデータは、県別所得合計を各県の総人口で除しているので、給与所得者ではない高齢者が多い地方の方が安く出る傾向はありますがね。
とはいえこの本に紹介されている実例は、そのような統計上の数字だけでは分かり得ない生々しさをはらんでいます。
例えば夫と別れ、二児を抱えながら三つの職場を掛け持ちで働く女性の例。
夫と別れ、家賃が払えなくなって引越しを続け、その結果正社員として雇用してもらえずパートを掛け持ちする日々。どこまで働いてもギリギリの生活から抜け出せない状況が赤裸々に綴られています。
きっかけは、離婚したり、父親が倒れたり、妻の看病が必要になるといった、誰の人生にも起こりえるちょっとした躓きなのです。
その結果いくつかの悪条件が重なると、貧困から抜け出せない状況に陥るという、この国の制度と経済の欠陥がこの本から読み取れます。
日本国憲法第二十五条「生存権、国の生存権保障義務」
「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
その生活保護の適用を受けるためには、例えば持家がないこと、親族に援助を求められないことといった条件が付き、その結果保護を受けられない貧困層が増えているというのが実情のようです。
そして何よりも雇用の機会が得られないこと。
その制度が弱いこと。
企業にその余裕がないこと。
この本で示唆される日本という国の問題点はそこになります。
新規ビジネスの開拓を担う立場の自分としては、改めて雇用創出の意義を意識させられた本でした。
僕の場合、この本を読んでビジネスのモチベーションが上がりました。
今の日本経済の現状、起こっている問題の一つがわかる本です。
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